
レーシングシミュレーター(レースシム)において、VRヘッドセットは圧倒的な没入感と距離感の掴みやすさを提供してくれます。しかし、「重さによる首への負担」や「顔面への圧迫感」に悩まされてきた方も多いのではないでしょうか。
今回導入した「Bigscreen Beyond 2e」は、そうした従来のVR機材の弱点を鮮やかに解決してくれるプロダクトでした。高額な投資にはなりますが、結論から言うとシムレース用途での満足度は極めて高く、導入する価値は十分にあると感じています。
そこで今回は、実際にレースゲームで使用して分かった使用感やメリット、そして購入前に知っておくべき注意点を詳しくレビューしていきたいと思います!
本体・付属品とオプションパーツをチェック
今回はBigscreen Beyond 2e(アイトラッキング搭載モデル)本体と一緒にオプションパーツとして、「オーディオストラップ」と「ヘイローマウント(ユニバーサルフィットクッション同梱)」を注文しました。

Bigscreen Beyond2e本体と同梱物一式。
| 項目 | 詳細スペック |
| ディスプレイ | Micro-OLED × 2(有機EL) |
| 解像度 | 片目 2560 × 2560(SteamVR 100%時レンダリング解像度: 3560 × 3560) |
| リフレッシュレート | 75Hz / 90Hz |
| 視野角 (FOV) | 対角 116°(水平 108° / 垂直 96°) |
| PPD (画素密度) | 最大 32 PPD |
| コントラスト比 | 500,000:1 |
| レンズ | パンケーキレンズ |
| アイトラッキング | 搭載 |
| IPD(瞳孔間距離)調整 | 片目ごとの独立調整可 |
| 本体重量 | 約 108 g(ストラップ・ケーブル除く) |
| トラッキング方式 | SteamVR Base Station 1.0 / 2.0(外部トラッキング) |
| オーディオ・マイク |
内蔵ステレオマイク搭載(オーディオ/スピーカーはオプション)
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ただし、ヘイローマウントは「スレッジリンク」というプラスチック部品の破損防止と耐久性向上のため、射出成形金属(MIM)パーツへ仕様変更されることになり、そのため今回はマウント本体の到着が間に合わず、同梱の「ユニバーサルフィットクッション」のみが届いた状態でのレビューとなります。

ユニバーサルフィットクッションは柔らかい(SOFT)と固めの(FIRM)が同梱されている。
Bigscreen Beyond 2e本体仕様とストラップの装着感
まずは現時点で世界最軽量級とされるBigscreen Beyond 2eですが、公式では本体重量が108g(Bigscreen Beyond 2は107g)と既存のVR機器を凌駕する超軽量設計で、手に取った瞬間からその違いが分かります。

実測では111.72gと若干の違いはあるものの、誤差の範囲かと思います。
ここまで軽量となると付け心地も今までのVR機器とは違い、従来のフロント側がズレ落ちるという感覚はもはや無く、イメージとしてはスキーゴーグルを付けている程の感覚で、激しい動きをしないレーシングシミュレーターやフライトシミュレーターであれば、標準のゴムバンドのままでも快適に利用できる。

またオプションのオーディオストラップを装着すると、さらにホールド感が増し、ユニバーサルフィットクッションは「顔に締め付ける」から「顔で支える」へ変わり、長時間の耐久レースやトレーニングにもより集中しやすくなります。

音質については好みが分かれる部分ですが、個人的には中低音も程よく出ており、高音もキンキンと耳に刺さる感じのない素直で癖のないサウンドだと感じました。レースゲーム用途であれば十分満足できるクオリティかと思います。
ただ一点気になったのは装着時の取り回しです。私は普段ワイヤレスイヤホンを使うためスピーカーを画像のように常に跳ね上げた状態でスムーズに被れますが、そのまま装着しようとするとスピーカーが耳に干渉して少し被りにくく感じるかなと思いました。
標準バンドも悪くありませんが、装着感が「締め付け」から「顔で支える」感触に変わり快適性が跳ね上がるため、私としてはオーディオストラップの追加装着を強くおすすめします。また、所有感を満たしてくれる美しく洗練されたデザインも大きな魅力です。
左右独立のIPD(瞳孔間距離)調整方法
Bigscreen Beyond 2eには、左右独立してレンズを動かせるIPD(瞳孔間距離)調整機構が新しく搭載されました。初代モデルのような完全固定型とは異なり、自分の目の位置に合わせた細かな微調整が可能です。

付属の専用IPDツール(六角レンチ)を使用することで、物理的な瞳孔間距離を53mm〜70mm(光学的なカバー範囲は48mm〜75mm)の範囲で調整できます。
今回、左右独立調整の機能を試すにあたって改めて自分のIPDを計測してみたところ、鼻の中心から右目までが32mm、左目までが30mmと、自分の顔が左右非対称であることが分かりました。
実際にミリ単位でずらして見比べた際の劇的な差までは感じにくいものの、左右それぞれを自分の顔にピッタリ合わせられることで、視界のピントや立体感を最大限に引き出せ、長時間の利用での目の疲れ具合も軽減されるのではと思っています。
【補足】少し特殊なIPDの設定・計算手順
本体の目盛り(53mm〜70mm)を見ると「片目32mmや30mmに合う数値がない?」と迷いやすいですが、以下の手順で計算して設定します。
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本体側の目盛り調整(物理調整)
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片目の数値を2倍して本体の目盛りに合わせます。
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右目(32mm):32 × 2 = 64 の位置にセット
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左目(30mm):30 × 2 = 60 の位置にセット
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管理ソフトでの設定(ソフト側調整)
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専用ソフト「Bigscreen Beyond Utility」には左右の平均値を入力します。
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平均値の計算:(64 + 60) ÷ 2 = 62
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ソフト上のIPD数値を 62 に設定して完了です。
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少し分かりづらい部分ですが、購入された方はぜひ両方の見え方を確認しながら、ご自身にとってのベストな位置を探してみてくださいね。
Bigscreen Beyond 2eの接続とソフトウェアの仕様
PCとの接続には、付属のリンクボックスと取り回しの良い細くしなやかな専用光ファイバーケーブルを使用します。着座時にシートとの干渉がしにくい点と、ケーブル自体が軽いので引っ張られる違和感が軽減される点も好印象です。
SteamVRにネイティブ対応で安定のソフトウェア
ソフトウェア面ではSteamVRおよびOpenXRに完全対応しており、本体をPCに接続するだけで管理ソフト「Bigscreen Beyond Utility」が自動でインストールされます。設定項目はリフレッシュレート(75Hz/90Hz)、IPD調整、ファンスピード、画面の明るさ、本体LEDカラーと非常にシンプルです。

Beyondファームウェア:v0.1.1時の画像です。
なお、アイトラッキング機能(Beta版)を利用する場合は、サポートへメールで問い合わせると送られてくるユーザートークンと手順に従って設定を行います。
他の中間ソフトを挟まずSteamVRランタイムと直接通信するため、遅延が抑えられるうえ動作も極めて安定しています。実際1か月ほど使用しましたが、SteamVRがクラッシュして強制終了することは一度もありませんでした。
トラッキング環境と導入コストの注意点
Bigscreen Beyond 2eは軽量化を最優先しているため本体にトラッキング用カメラがありません。そのため、ベースステーションとコントローラーを別途用意する必要があります。
出来る限り導入費用を抑えたかったので「ベースステーション1個+コントローラー1個」の最小構成を試してみましたが、適切な位置に設置すれば、真後ろを振り向くような極端な動きをしない限りレースシム用途では1個でも問題なくプレイ可能でした。コントローラーも設定等で使う程度のため、1個あれば困る場面はありません。

今回試したベースステーションと着座時の頭の位置関係
ただし、今回初めてアウトサイド・イン方式でプレイして気が付いたのですが、ベースステーション1個で運用する場合の注意点もあります。
1つはレーシングシミュレーター環境では、ステアリングやコックピット自体が遮蔽物となり、コントローラーの操作位置によってはベースステーションからの赤外線を遮ってしまうことがあるということです。
そのため、死角をなくして安定してトラッキングさせるには、費用はさらにかさんでしまうがベースステーションを2個に増設するか、意識してうまくコントローラーに障害物が入らないよう、少し腕を上げて操作するなどの工夫が必要と感じました。
そして、もう1つはベースステーションとコントローラーには「1.0」と「2.0」の規格があり、双方に互換性が無いということにも注意が必要です。
私自身、可動パーツがあって寿命が気になるベースステーションは「2.0」の新品を選んだのですが、少しでも費用を抑えようとしてコントローラー側に中古の「1.0」を誤って購入してしまい、結局「2.0」を買い直す羽目になりました。
初めてベースステーション環境を構築する方は、私のような失敗を避けるためにも、必ず「ベースステーションとコントローラーのバージョン(1.0か2.0)」を確認して下さい。
故障リスクを考えると、これから揃えるなら「2.0」の新品を選んでおくのが一番安心です。
Bigscreen Beyond 2eを装着しレースシムでプレイ
それでは実際にBigscreen Beyond 2eを装着し、レースシムでプレイした感想をまとめていきたいと思います。
漆黒の夜間走行と扱いやすいPC要求スペック
画質面については有機EL(Micro-OLED)による「黒」の表現が素晴らしく、液晶(LCD)パネルとは明らかに異なり、黒が完全に沈み込む「漆黒」として描画されます。夕方や夜間レースの雰囲気はこれまでのVRと完全に別物で、暗闇の立体感や没入感は圧巻の一言です。

レンズ越しにスマホで撮影した無加工の映像です。
解像度についてもレース中のクリッピングポイントや遠方の標識を視認するのに十分な高解像度(SteamVRレンダリング解像度3560×3560)を備えており、またフレームレートは75FPSと90FPSが選択可能です。
ただし注意点として、90FPSに設定するとケーブルの伝送帯域の上限に達するため、映像データに圧縮処理がかかり画質(解像度)が低下します。 実際にSteamVRのレンダリング解像度を「自動」にしていると片目あたり2688×2688まで自動的にダウンスケールされてしまうため、フレームレートのスムーズさを取るか、75FPSで高画質を取るかのトレードオフになります。
これについては実際に両方の設定で走り比べてみましたが、結論から言うと私は「画質優先の75FPS」の方がおすすめです。

レンズ越しにスマホで撮影したリフレッシュレート比較画像。左:75Hz設定、右:90Hz設定
スマホで撮影した画像では違いを感じにくいですが、両者を比較した場合ダッシュメーターの文字や看板、遠景の輪郭が90Hzでは少しボケを感じます。
一方、75FPSと90FPSの「滑らかさの差」については、意識して比較すれば確かに違いは分かるものの、私としては妥協出来るレベル。実際に20〜30分ほど走行していると、フレームレートの差は気にならなくなりました。
また、75FPS運用であれば現行のハイエンド機に比べて要求PCスペックが非常に現実的です。フレームレートを安定させやすく、ミドルクラスのPCでも本来のパフォーマンスをしっかり引き出せる点は、Bigscreen Beyond 2eの大きな魅力と言えます。
必要十分なFOV(視野角)と快適な視線移動
Bigscreen Beyond 2eのカタログスペック上の視野角は「水平108° / 垂直96°」です。Pimaxなどの超広視野角を謳うハイエンド機には及ばないものの、Meta Quest 3といった一般的な標準機と同等クラスの広さとなっています。
初期モデルのBigscreen Beyondでは視野角が狭いという評価でしたが、今作のBigscreen Beyond 2eはコンパクトな本体とレンズにもかかわらず、実際に装着した感想は「必要十分な視野角がある」でした。

赤枠がコックピット視点で見えている範囲のイメージ画像です。
水平108°の場合、正面を向いた状態で、運転席側のサイドミラーは半分ほど視界に入り、助手席側を見るには首を振る必要があります。正面を向いたまま周辺視野だけで真横の車を捉えるのは少し厳しめです。
ミラーや並走車をしっかり確認するには少し首を振る必要がありますが、これは他の多くのVR機器でも同様ですし、レースシムの場合これだけの視野角があれば私は十分実用的かと思います。
また、レースシムではコーナーの先やサイドミラーを確認する際、瞬間的に横を向いて素早く正面に戻す動作が頻繁に発生します。重量のあるVRヘッドセットでは本体の重み(慣性)で首が引っ張られる感覚がありますが、Bigscreen Beyond 2eは超軽量なため、首を振ってもそうした「慣性」を感じず、これは今まで利用してきたVR機器とは明らかに違う体験でした。
顔面圧迫からの解放
オプションのオーディオストラップとユニバーサルフィットクッションを装着することで、顔全体を強く締め付ける必要がなくなり、長時間のレースやトレーニングでも顔が痛くなりません。
これまでは1レース終わるたびに休憩を兼ねてVRゴーグルを外し、PCモニターでの操作に切り替えてから再び装着する……という使い方をしていました。しかし、Bigscreen Beyond 2eにしてからはレース後も被ったまま、VR内のバーチャルデスクトップで操作してそのまま次のレースを再開するスタイルに変わりました。
プレイ時間は増えたにもかかわらず疲労感は軽減しており、長時間の走行にはまさに最適解と言えるVRヘッドセットです。
また本体の発熱についてはディスプレイの明るさ設定にもよりますが、設定を「50」で利用している環境だと、顔へ熱が伝わるやレンズが曇るということもなく、これも長時間の快適さの一つだと思います。
気になった点と対策
全体的に満足度の高いBigscreen Beyond 2eですが、使っていくうちに気になる部分も見えてきましたので、その部分にもしっかりと触れつつ、どのように対策したかも説明したいと思います。
光の拡散・反射によるグレアが目立つ
有機ELの黒表現が素晴らしい反面、夜間レースの暗闇の中で「前車のブレーキランプや街灯が強く光るシーン」では、レンズ内で光が拡散・反射するグレア現象が目立ちます。

真っ黒の夜空に白く薄いモヤ(グレア)が確認出来ます。
私個人的にはレースシムプレイ中は余り気にならないですし、それ以上に黒の締め付けのメリットの方が高いと感じましたが、暗いシーンが多いゲームや動画鑑賞などではよりグレアを感じやすくなるので注意が必要です。
暖色系のディスプレイとやや明るさ不足
デフォルトでは全体的に少し暖色系(黄色が強い印象)の映像だと感じました。正確な色にこだわる方はそのままだと少し違和感を感じると思います。また明るさもPimax Clistal Super等のハイエンド機と比較するとかなり暗く感じます。
一応、カラーバランスに関しては「Bigscreen Beyond Utility」である程度の調整が可能です。

赤枠の部分をクリックすると「高度な設定」へ移動し、ディスプレイの色味が調整可能です。
私はディスプレイの色味をR(赤)0.9、G(緑)1.1、B(青)1.4へ調整してみました。デフォルトより黄色が抑えられより自然な色に近づいたかと思います。
また明るさ不足については、「100」以上(オーバードライブ)に設定する事でだいぶ改善されますが、その反動でファンも全開に回りだし明らかに無理をしている状態となります。有機ELの特性上、焼き付きも気になりますし、明るくなるほどグレアもより目立ってしまうので、バランスを見て私は「50」とやや暗めの設定にしています。
アイトラッキングの位置調整がシビアな理由と対策
アイトラッキング機能は現状「Beta」版となっており現時点での評価となりますが、精度自体は悪くないものの、キャリブレーション(設定)を行った時と全く同じ位置・角度で装着し直すのが物理的に難しいと感じました。装着位置がわずかにズレるだけでアイトラッキングの位置もズレるため、被り方には少し気を使います。
この対策にはアイトラッキングのオプション内にある「アライメントヘルパーを表示」を利用することで、装着後にズレが無いかを確認することが可能です。

設定後、目線を下へ向く事で赤枠のオーバーレイが表示され、アイトラッキングのポイントが枠内に収まっているかを確認できる。
毎回確認する必要があるので手間は掛かかりますが、アイトラッキングによるDynamic Foveated Rendering(見ている中心部分だけを高精細に描き、それ以外を低解像度化する技術)は非常に強力なパフォーマンス向上方法の一つなので、PCスペック不足を感じている方は試す価値は十分にあります。
おわりに
今回のBigscreen Beyond 2eのレビューはいかがだったでしょうか?
決して安い買い物ではありませんし、ベースステーション等の周辺機器を含めるとハードルは高く感じられます。しかし、「圧倒的な軽さ」「慣性の無さ」「漆黒の圧倒的画質」がもたらすメリットは、シムレーサーにとって何物にも代えがたいアドバンテージだと感じました。
さらに、75FPS運用であれば最新のハイエンドPCでなくても最高画質をしっかり引き出せるため、要求スペックが現実的で導入しやすい点も大きな魅力と言えます。
気になる点や注意点もありますが、それを補う程の魅力がBigscreen Beyond 2eにはありますので、VR機器選びの一台として、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか?
この記事が、皆様のVR機材選びや導入の参考になれば幸いです!


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